(3)畜産食材
食肉用家畜は魚類に比べて牛・豚・馬・羊、鶏と種類は少ないが、屠体が大きく部位による性状が異なるため、魚類がせいぜい背肉、腹肉に区分されるのに対し、肩ロース肉、胸肉、もも肉、ヒレ肉などと筋肉部位ごとに名称を付して流通されるのが特徴である。また、肝臓など内臓も食用として利用さる。
食肉成分の変動は小さいが、おおよそ水分60~70%、タンパク質18~20%、脂肪10~20%、灰分1%となっていて、魚類に比べ一般的に低水分であるうえに、強靭な皮膚と大きな屠体とから、細菌の繁殖と内部への侵入は遅れ、そのため冷蔵保管における賞味期間は比較的長い。
また、魚類においては高水分が影響し鮮度落ちが速く、そのうえ死後の硬直時間は短いので、早めの消費が必要になるのに対し、食肉の場合は死後の屠体は硬く、牛肉では軟化するのに7~10日も要する。そのため、熟成が完了するまでの期間は硬くうま味もまだ出ないので、直ちに販売に供することはできない。それでも、牛肉に比べ、鶏肉は鮮度低下の点からはどちらかというと魚肉に近いので、消費期限も短く、いっそうの低温管理が必要になっている。食肉は精肉としてのチルド販売量が多いが、冷凍食品のハンバーグ、豚カツ、鶏から揚げ用などとしても冷凍肉が広く利用されている。
食肉の生産と流通
図2.18には牛の解体工程を示した。屠殺前には家畜を安静にさせ、体内のグリコーゲンレベルを高く維持し、疲労やストレスを解消しておくことが、その後枝肉のpHを正常に保ち、微生物による汚染を防止し、肉の変色を防止するためにも必須な措置である。また、安静により毛細血管中の血液量を低く抑え、放血をより十分にし、貯蔵中の変質を抑えることができる。
解体に先立ち電気ショック、空気銃、炭酸ガス麻酔などにより失神させ、頸動脈を切って放血する。金属棒やワイヤーを挿入して脊椎を破壊し、痙攣による体内エネルギーの損失を防ぐ。前脚を切り、各部を剥皮して頭部を切除し、内臓を摘出する。次いで電動鋸を用いて背割りすると半丸の枝肉となる。この間の作業は重量物である屠体をフックに吊るし、レールに懸垂したまま流れ作業により迅速に行う。血液、汚物の水洗は枝肉の乾燥を防止し、冷却を促進するためにも有効である。
屠殺後の枝肉の温度は硬直熱の発生により、牛肉、豚肉ではほぼ24℃に上昇するため、速やかに0℃付近まで下げる。硬直熱を冷やすためには湿度95%、風速1~3m/sに調節した-1~-2℃の冷風を送風する。
予冷には次のような重要な役割がある。①屠体の体温を下げ、微生物や酵素の作用を抑制することでネトの発生を防止する。②死後硬直の開始を遅らせる。③表面に水分5%程度の被膜を形成し、微生物の侵入を防止するとともに、目減りを防ぐ。④体脂肪を凝固させ、酸化しにくくする。⑤筋肉を締まらせ、その後の作業を容易にする。⑥肉色の変色を抑える。
冷却作業は連続的な流れ作業が理想的であり、大動物では2日間も要するので、可能な限り分割する、また作業室を並列配置してバッチ作業のローテーション化を図るなど冷却条件について種々の対策が講じられる。
予冷時に最も重要なことは、急激な冷却のために生じる「寒冷収縮」現象を抑止することである。筋肉のpHが6.3以下に低下する前に肉の温度が10℃以下に冷却すると、細胞内の筋小胞体やミトコンドリアが持つCaイオンの保持能力が低下し、Caイオンが漏れ出し、収縮に必要なエネルギー物質ATP(アデノシン3リン酸)がまだ残っていたりすると、生筋と同様の機構で筋肉が収縮する17)。
このような状態に陥ると、筋肉は収縮しそれに伴い硬化してしまい、その後の熟成過程においても十分な熟成ができなくなる。したがって、冷却開始後20時間までは8℃以下にしない方がよいといわれている。大型動物に生じる寒冷収縮は困った現象であり、これの対応のため迅速な解体・加工処理が停滞する。その解決法として、屠体の電気刺激を行って積極的に解糖およびATPの分解を促進し、寒冷収縮を防止しながら冷却時間の短縮を図っている。
筋肉から食肉へ
生体の筋肉が屠畜後どのような生化学的な変化を経て食肉に変換するのだろうか。図2.19には肉の硬さ(物性)、保水性および風味の3要素を指標に各過程における一連の変化を模式的に示した。
屠畜後ATPの枯渇と乳酸の生成によるpHの低下とから、死後の筋肉硬直現象が始まる。硬直が始まるにつれ、筋肉は硬さを増し、保水性も低下する。最大硬直まで牛で24時間、豚で12時間、鶏で2時間程度と、種によってかなりの幅がある。硬直が解除するにつれ物性は柔らかさと保水性を取戻し、またそれまで風味が乏しい肉質が徐々にうま味を増していく。これら後期の肉質変化を「熟成」といっている。
硬直期に形成されたアクチン・ミオシン複合体の結合がルーズになるにつれて軟化し、またそれに伴いタンパク質が分解しグルタミン酸などの呈味性アミノ酸・ペプチドが生成する。またATPが分解してイノシン酸も生成し、これらの相乗効果により風味が増加してくる。このように屠畜筋肉はすぐには食用に適さず、熟成工程を経て初めて食用に供される17)。
熟成処理が済んだ冷却枝肉は分割して除骨し、血液で汚染された部分やリンパ節など食用にならない部分を除去すると「正肉」と称されるようになる。正肉からさらに余剰の脂肪を除き、整形すると各部分肉が得られる。(図2.20)
取引規格に基づく部分肉は、牛では「ネック」、「かた」、「肩ロース」など13種に、豚では5種に分割できる。さらに、「肉質等級」および「重量区分」を加味すると、そのアイテムはかなりの種類となる。各規格肉は日本ではチルド流通する場合が多い。
規格肉は小売り用として、各種の料理素材に適した厚切り肉、薄切り肉、ひき肉、かたまり肉など最終製品形態である精肉として、一般消費者に届けられる。
食肉の冷凍
輸入肉の形態は、牛肉はチルド品と冷凍品が各半々、豚では7割が冷凍品、鶏では大部分が冷凍品である。部分肉、規格肉は整形後フィルム包装または真空包して箱詰めし、-35~-40℃エアブラスト急速凍結室にて凍結すると冷凍肉となる。急速凍結も重要だが、食肉の冷凍においては、冷凍保管中の変質防止が重要となる。-24℃以下に保管すると12か月保存が可能である。
冷凍肉を解凍して利用する際に注意を要する点は「解凍硬直」である。熟成工程を経ないでまだATPが残存したまま凍結した冷凍肉、特に温屠体除骨によって調製された部分肉では、解凍時に非常に強い収縮が起こり、解凍後に硬い食肉となって商品価値を失う。枝肉のようにまだ骨付きの場合はその収縮の程度は軽い。現在の食肉加工業界では、このような事態が生じないように、各工程においてしっかりと経歴を把握した予防措置が取られている。
冷凍肉の品質劣化原因のひとつに「冷凍焼け」がある。冷凍肉の氷結晶が、保管温度が高い、また保管温度の変動により昇華し、そのあとが多孔質となり次第に深部前に及ぶようになる。多孔質になるとその部分が乾燥しやすい。特にその部分は肉中の脂肪が空気酸化され、酸化生成物とタンパク質とが反応して褐変物質を作りやすい。あたかも焼け焦げたように見える。
このような冷凍焼けの現象は、保管温度の変動が大きいまた包装が不完全な場合が重なると発生し、水分が15%ほどに減少し、水を加えても復元することはない。同時に風味も抜ける。さすがに近年はこのような冷凍焼けした食肉は見当たらない。
輸入牛肉の形態にはチルド、冷凍のほかにエージドビーフと称される形態がある。チルドでは生肉なので、長距離輸送・流通中の保存性に難点がある。冷凍ビーフは大部分が熟成せずに凍結されるため、解凍時の熟成措置が煩雑である。
エージドビーフは両者の欠点を補った輸送形態といえる。つまり、屠畜後の枝肉を分割、整形後真空包装し、0℃付近のチルドで輸出する。輸送中にATPも分解し、熟成が進む。これを国内搬入後-33℃以下の低温に急速冷凍し保管しておく。需要に応じて出荷する。急速解凍しても、解凍収縮は起こらず、肉質は柔らかで風味も良く、最高の状態で販売できるというわけだ。輸送の日程管理が重要となる。
牛肉
肉用牛は主に生後5~7か月目の去勢オス牛を肥育すると、体重300kgの小牛が約20か月で約700kgの成牛となる。国産肉牛の種類としては、「黒毛和牛」が最も多く、次に「褐毛和牛」、北海道、北東北で飼育される「日本短角種」および「無角和種」の4種が代表的な種類である。これ以外の国産種はホルスタインとの交雑種である。農水省のデータでは2013年における国内生産量は354千トンである。
輸入牛肉は主に欧州原産の「アバディーンアンガス種」、「ヘレフォード種」の外国種である。財務省貿易統計によると、その輸入量は535千トンと国内生産を上回る量となっていて、米国から20万トン、豪州から30万トンと両国からの輸入で約90%に達する。いずれの国からもチルド肉が3~4割を占めているのが特徴である。
牛枝肉の取引規格に基づく部分肉は、図2.21のように13のパーツに区分される。よく知られる部分の名称は、ばら肉、サ―ローイン、すね、かた、ヒレ、ロースなどであるが、それが実際どの部分なのかとなると心もとない。これら部分肉にも、枝肉取引規格によって格付けされた等級が適用される。すなわち、肉質等級においては脂肪交雑、肉の色沢、肉の締りときめの細かさ、および脂肪の色沢と質の4項目評価において1~5の5等級が、また重量区分はS、M、Lの3区分となっている18)。
豚肉
現在、国内における飼育においては、純粋種は第二次大戦後導入された「ランドレース」、「大ヨークシャー」、「デュロック」、「バークシャー」の4種に集約されている。前2種は大型化し発育も速く、繁殖率も高いのが特徴である。デュロック種は褐色の大型種、バークシャー種は黒色の中型種である。
また、ランドレースと大ヨークシャーの一代雑種を母親にデュロック種を交配した三元雑種が肉用豚として広く生産されている。また、これらとは別に、黒豚のバークシャーの飼育頭数が増加している。
豚肉の国内生産量が914千トンであるのに対し、輸入品はチルド、冷凍併せて744千トンとなっていて、このうち米国、カナダおよびデンマークの3国からの輸入が全体の8割を占める。
枝肉の格付けは、半丸重量と背脂肪の厚さにより等級を、ついで外観と肉質の各項目によって5段階に判定される。なお、外観は、左右均称、肉づき、脂肪付着、仕上げの4項目、肉質は肉の締まりおよびきめの細かさ、肉の色沢、脂肪の色沢と質、脂肪の沈着の4項目により判定される。
豚肉の部分肉の5区分の名称を図2.22に示した。「かた」には運動量の多い筋肉が集まり、ややきめが粗く肉色も濃い。薄切り、角切り、煮込み料理用、またひき肉としても最適である。
「ロース」はきめが細かく軟らかいので、とんかつ用に適する。「ヒレ」は最も柔らかな赤身の部位で人気があり、輸入量も多い。「ばら」は柔らかでコクと風味に富み、最も豚肉らしい部位といわれる。「もも」は脂肪も少なく、あらゆる豚肉料理に利用される18)。
鶏肉
鶏肉は牛肉や豚肉に比べ鮮度の低下が速い。食鳥の解体はほとんど連続式で処理加工される。生きている鶏を処理工場に搬入後、一羽ずつ処理機に懸鳥し、屠殺・放血する。60℃1分ほど湯漬けしてから除毛機で羽毛を除き、表皮をガス焼きし、残毛をすべて除く。表面の一次殺菌効果も兼ねている。脱羽後は速やかに冷却する。冷却法は水槽または、スピンチラーの中で氷と水で冷却する。微生物による汚染を防ぐために、50ppm次亜塩素酸ナトリウム液を殺菌水とする。
冷却屠体はそのまま包装し直ちに凍結する場合もあるが、通常は骨付きのままカットするか、除骨し生肉のままトレーまたは袋詰めしたのち凍結する。袋は酸素透過性の低い材質のものを用いて密封する。食鳥の凍結法にはエアブラスト式、コンタクト式、窒素ガス凍結式の一般的な方法のほかに、密着包装品を冷却ブラインに浸漬して凍結する方法、またシャワー凍結方式がある。貯蔵は-18℃以下ではあるが、-25℃保管が標準となっている。
鶏肉の分割部位の名称を図2.23に示した。肉色は淡く、胸肉はホワイトミートといわれるように特に淡色で、脂肪が少ないのでローファットのサラダ素材として好まれる。わが国ではもも肉が好まれる。もも肉は運動量が多く、味が濃厚なため和風料理として多く使用される。これら主品目のほかに皮(頸皮とそれ以外の皮)、もつ(可食内臓)、きも(心臓、肝臓)、砂肝などの副品目がある。
鶏肉は味・色沢ともに淡白で、好みの味に加工しやすいので、唐揚げ、焼き鳥、ミートボール、ローストチキンなど多方面に利用されている19)。
食鳥の取引規格によると、若どりとは3か月齢未満、肥育鶏とは3~5か月齢未満、親めすとは5か月齢以上の雌食鶏、親おすは5か月齢以上の食鶏の雄と規定されている。また、若どりの生体重量の区分は大(2.0kg以上)、中(1.5~2.0kg未満)、小(1.5kg未満)となっている。また、鶏肉を生産することだけを目的として育種された鶏で、6~12週齢の肉用若鶏はブロイラーと称される。米国の食鶏規格では大型で丸焼き用のロースター、フライに供される中型のフライヤーと、小型で焼き肉用のブロイラー(broiler)の三種に大別され、その料理法の名称が付される。
肉用鶏のおもな品種には、英国原産の「白色コーニッシュ種」がブロイラー改良における雄系の代表で、雌系の代表には米国原産の「白色プリマスロック種」が飼育されている。他に中国原産種の「コーチン」、英国の交配種「ライトサセックス」がおいしい肉質として定評がある。
わが国における鶏肉の生産量は1,470千トンとなっている。鶏肉は従来中国、タイなどからの輸入に頼っていたが、2004年以来東南アジアにおける鳥インフルエンザ発症の影響により、2013年にはブラジルから376千トン、米国から24千トン、合計405千トンを輸入せざるを得なかった。2014年末には清浄性が確認されタイからの輸入が解禁された。
鶏インフルエンザウィルスが加熱に弱いこともあり、生肉に代わり唐揚げ、フライドチキン、ナゲット、焼き鳥などの加熱済の安全な中間製品が調整品の名目で450千トンがタイ、中国など東南アジアから輸入されている。つまり、ブロイラーとして405千トン、調整品として450千トン、併せて855千トンの鶏肉および加工品が輸入されていることになる。
海外における鶏肉製品や鶏肉調理冷凍食品の製造には、国内生産以上に衛生管理と安全管理に気を遣っていることが分かる。家畜や養殖魚を原料として用いる場合留意することがいくつかある。そのひとつは、その種の系統を重視し、なるべく共通の遺伝子を持つ群を維持管理し、原料品質の均質性を維持することから始まる。鶏肉なら何でもよいというものではなく、種や系統の異なる原料を無視して使用することは避けている。
次には飼育の環境保全である。鳥インフルエンザ防疫対策として、鶏舎に野鳥の侵入を完全に防ぐ施設と警備点検が欠かせない。ドアの施錠忘れや野生動物が開口し、そこから野鳥が侵入するなど想定外の事態に対する二重の防御が欠かせない。
もうひとつの対応は製品の加熱を確実に行うことである。鳥インフルエンザウィルスの場合は70℃、1分以上の加熱が必須要件である。
食肉の衛生管理
家畜の飼育管理においては、家畜自体の伝染性疾患を抑制することが、それを食するヒトに対する安全にとっても通底する基本条件である。そのためには、畜舎や器具の清浄化、作業者の出入時の衛生管理、飼料や水の管理、出荷時の健康確認など予防のための法的基準の順守が義務付けられている。
一方、動物由来のヒトへの感染症対策は重要である。動物を経由して感染する疾病には、BSE(牛海綿状脳症)、SARS(重症急性呼吸器症)、高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)の脅威がある。また従来から、腸管出血性大腸菌O157による牛肉の汚染、鶏肉のカンピロバクター汚染、鶏卵のサルモネラ菌汚染によるヒトの健康被害も相次いでいる。
また、動物の健康を維持するために各種の動物用医薬品が使用され、それとともにその残留が人体に影響を及ぼさないための禁止医薬品、基準を上回る抗生物質の残存がチェックされる。わが国では牛のトレーサビリティ制度が2004年から施行され、出生から出荷までの飼育経歴の記録を個体識別番号によって管理することによって、肉の安全を図るシステムが導入された。耳に付した黄色の標識である。
一方、畜肉を始めとする輸入食糧の安全性はどのように管理されているのだろうか。わが国では農林水産省管轄の動物検疫所、植物防疫所が動植物の検疫を担当し、また厚生労働省管轄の検疫所が人や食品の水際における検疫を担当している。
このように動植物自体の伝染性疾病や病虫害を未然に食い止めることと、人の安全を守るための両面から検疫は実施されている。基本的には畜肉の輸入に際しては指定検疫物として動物検疫所に申請し検査を受けることになっていて、また食肉製品については主に厚労省検疫所輸入食品監視担当に申請し、食品衛生法に基づく検査ののち通関書類とともに税関に提出する。
家畜伝染病予防法に規定されている指定検疫物のうち、骨・肉・卵・皮・毛類の検査は畜産物の輸入検査要領(動物検疫所 平成24年)によって実施される。検査には、申請書、輸出国政府発行の検査証明書の確認および現物抜き打ち検査がある。消毒検査の必要性の可否判定後、必要に応じ微生物学的、理化学的また病理学的精密検査を行う。検査結果合格すれば検疫証明書が発行されるが、不合格の場合は焼却・埋却・返送の措置が命令される。
食品衛生法によって規定されるのがポジティブリストに基づき検査される抗生物質などを含む残留農薬、また微生物、食品添加物である。これらの物質が検出されていないか、また基準値内にあるか、輸入食品検疫所における分析・検査によって監視されている。
鶏卵
日本養鶏協会の調べによると、2014年における国内鶏卵生産量は殻付品換算で約250万トン、輸入量は同じく13万トンであり、1990年以降ほぼ安定した供給量となっていて、卸売価格は価格の優等生といわれるほどに180~200円/kgと安定していたが、2014~15年には220~240円/kgとやや高騰した。
2014年における輸入品の通関実績を表2.2に示した。米国からの輸入量が卓越していて、殻付卵1,600トン、卵黄粉2,111トン、凍結卵黄6,036トン、全卵粉1,192トン、凍結全卵194トン、卵白粉100トンとなっているほか、中国、タイから凍結全卵が各1,500トン、インド、オランダ、イタリアから卵白粉が各1,300~3,600トンが輸入されている。
冷凍全卵は全卵を加圧や撹拌によって均一化したのち冷凍したものであり、一部の卵黄がゲル化するので、解凍後再度ホモジナイザーで均質化する。ただし、3~5%の加塩、10%以上の加糖により解凍後のゲル化は防止できる。冷凍全卵は長期の保存性に優れ、安定した価格維持が見込めるところから、製パンを主体に、マヨネーズ製造、製菓などの分野に利用される。
また、冷凍卵白は凍結により若干粘度が低下するものの、製パン、製菓、水産・畜産ねり製品に広く用いられる。一方、冷凍卵黄の調製には蔗糖、食塩などを5%添加してゲル化を防いでいる。欧米では冷凍全卵は牛乳容器と類似のパックで流通しているが、国内では新鮮卵がいつでも入手できるため、その必要性が低いといわれている。
(4)農産食材
農産物は収穫後もまだ植物としての呼吸を続けている。低温保管することによって呼吸を抑え、目減りや萎れを防止し、新鮮さと栄養価を保持できるところから、収穫後効率的に予冷を行うことが原料管理上重要な技術である。
ブロッコリー、カリフラワーなどの果菜類、ほうれん草、小松菜などの葉菜類、えだ豆、インゲン、グリーンピースなどの豆類、ニンジン、レンコンなどの根菜類、サトイモ、ジャガイモ、サツマイモなどの芋類、ピーマン、カボチャなどの果菜類、またコーンなどの穀物類など、農産物素材を前処理後そのままIQF凍結する農産冷凍食品も多いが、コロッケ用やフレンチフライ用のジャガイモ、フライ食品用および餃子・焼売製造のためのデンプン・小麦粉、混合野菜用の粒コーン、その他ミカン、イチゴなどのフルーツ類、さらに冷凍米飯類用の米穀や麺類用の穀粉等々、冷凍食品においてもこれら農産物の占める割合は年々増加している。
元来、野菜類は冷凍すると品質がかなり劣化するため、冷凍食品の原材料としては不向きとされてきた。しかし、近年ブランチングによる加熱後凍結技術の改善や、調理時の加糖や低水分化調理による自然解凍可能な調理冷凍食品が開発され、冷凍食品分野における農産物の利用がいっそう進んだ。これら新規商品による市場の形成とともに、海外からの冷凍野菜の輸入も増加している。2014年の財務省貿易統計によると、わが国の冷凍野菜の輸入量は主にアメリカ、中国などから約95万トンと前年の6%増、金額は1331億円で10%増となっている(図2.24、25)。
コメと米飯
コメはわが国では数少ない食糧自給率100%に達している穀物であり、依然主食の座にある。家庭において炊飯し、米飯として食卓に供する従来の食用スタイルから、ピラフ、炒飯、すし飯など外食用へと、またおにぎりなどとともに、これらメニューの冷凍食品化とその多様さには目を見張るものがある。コメの消費と調理は家庭を脱し、コンビニ弁当やすし店など外食産業において、また冷凍食品おにぎりやえびピラフ製造など食品産業において新たな位置と役割を得ることになった。
コメの種類は熱帯地域で多く栽培されている「インディカ種」と、温帯地域で栽培される「ジャポニカ種」に大別され、ジャポニカ種のうち95%はうるち米であり、残りはもち米と少々の酒米である。うるち米のデンプンはアミロースとアミロペクチンの2種から構成されているのに対し、もち米はアミロペクチンだけでできているため、炊飯すると粘りが強い。長粒米のインディカ種ではアミロース含量が高いので、炊飯米は粘り気が少なくボロボロ飯となる。老化しやすい。デンプンを構成するアミロースおよびアミロペクチンの2成分の模型を図2.26に示した。
チルド用や冷凍食品用にはやや粘り気の強い低アミロース米が向いている。おいしい米飯のための品種改良が進められ、コシヒカリ一辺倒から脱却してきた。「新潟こしひかり」で18~22%のアミロース含量が、品種改良により生まれた「あやひめ」で9~15%、「夢ごこち」で12~16%など低アミロース米が流通される。
普通米への混合炊飯より単独使用が、冷めてもおいしい老化防止には有効である。コシヒカリは現在市場の4割を占めるトップブランドだが、おいしさの評価は産地によって異なる。「ひとめぼれ」は「ささにしき」の後継としてコシヒカリに次ぐ第2位のシェアを持ち、和食との相性が良いといわれている。ササニシキはかつて一世を風靡した銘柄だが、近年は生産量が減っている。
「あきたこまち」はコシヒカリの系統をひき、食味がよく冷めても美味しく、おにぎり向きといわれる。北海道産の「きらら」は硬めの食感ながら牛丼、炒飯などに利用される。「ミルキークイーン」は低アミロース米の代表品種で粘りが強く、冷えても硬くならないため、炊き込みご飯、おにぎり用に使用される。炊飯するとやや柔らかく仕上がる20)(図2.27)。食味のほかに、巨大胚芽米、健康機能米など新たな機 能を持つ米が作出されている。
冷凍米飯の代表的な商品「冷凍ピラフ」や「冷凍炒飯」はどのように製造されるのだろうか。そのキーポイントは、凍結時米飯が塊にならずIQF(バラケ)凍結することにある。炊飯の際には炊飯油を添加し、炊き上がり時に釜離れがよく、また放冷時に飯粒表面が油でコーティングされ、粒同士をくっつき難くする。ピラフ製造時にはこの放冷した米飯に各種の具材を連続的に混合する。この際、米飯が練り合わさるのを防止するため、専用の回転混合機を利用する。
凍結に際しても、塊にならないように製造する。そのためには、ネットコンベヤ式連続凍結ラインに米飯を供給し、ネットの下から冷風を吹き出し、米飯や具材をコンベヤ上で躍らせ、躍り上がった時点で粒の凍結が済んでいるように-40℃以下の冷風を送風し、相互の付着・塊化を防ぐ。このほかにも、振動コンベヤと回転篩を組み合わせた方式や、窒素ガス吹付後、板状に凍った飯粒を解砕する方式などユニークな凍結方式が採用されている。
小麦粉とその用途
食品の原材料は生物起源のため、工業材料などとは異なり、成分組成の変動が大きい。そのため、それを主原料として製造する加工品にも微妙な性状の差が出て、商品の組織・形状・色調・成分にも少なからずバラつきが出るのは避けがたい。しかし、このバラつきを極力少なくするために規格化し、また用途に適するように品種改良して、またブレンドによって使い勝手を良くするなどの対策が講じられる。
表2.3には小麦粉の品質を示した。小麦粉のタンパク質の割合がその性状を規定している。タンパク質含量12%以上の小麦粉は強力粉としてパン用に、9%前後の中タンパク粉は中力粉として乾麺やゆで麺用に、8.5%以下の低タンパクの薄力粉は菓子用に、それぞれの特徴を生かして利用する21)。
小麦粉の種類、等級、品質と主用途 (たんぱく質%) 長尾精一1994 | ||||||
等級 | 1等粉 | 2等粉 | 3等粉 | 末粉 | ||
灰分(%) | 0.3~0.4 | 0.5 | 1 | 2~3 | ||
強力粉 | パン
(11.5~12.5) |
パン (12~13) |
グルテン デンプン | |||
準強力粉 | パン
(11~12) |
中華麺
(10.5~11.5) |
パン (11.5~12.5) |
グルテン デンプン | 合板
飼料 |
|
中力粉 | ゆで麺 乾麺
(8~9) |
菓子
(7.5~8.5) |
多用途 (9.5~10.5) |
菓子 (9~10) |
||
薄力粉 | 菓子
(6.5~8.5) |
菓子 他 (8~9) |
粉質とともに粉の精製度を示す等級もまた品質を規定する。2~3等粉が穀粒の外側部分の混入比が高いため、灰分が0.5~1%と多く、色調も灰白色を呈する。これに対し、1等粉は穀粒の表面を丁寧に削り、内部の上質部を利用する。そのため、灰分も0.3~0.4%と低く、色調も淡色の微クリーム色を呈する。
そのうえ、小麦粉は産地や品種による性質の特徴がある。強力粉は主にアメリカ・カナダ産のパン小麦といわれる硬質小麦から調製され、パンに焼くと仕上がりは硬い。中力粉は麺のほかお好み焼き、たこ焼き、餃子の皮などに用いられる。オーストラリア産の中間質小麦を使用している。薄力粉はクッキー、ホットケーキなどの菓子やてんぷら粉に用いられる。アメリカ産、フランス産の軟質小麦が使用される。
野菜の鮮度管理
わが国における野菜類の生産量は2013年には、馬鈴薯、大根、キャベツ、玉ねぎを主体に1,000万トン、また生鮮野菜の輸入量はたまねぎ、かぼちゃなど85万トンと供給量は1,100万トンになっている。
一方、冷凍野菜の国内流通量は、2013年に100万トンを超え、そのうち約94万トンと大部分は輸入品に頼っている。国内生産量は、わずか8~12万トン前後で推移している。つまり、国内で生産される野菜類は主に生鮮品として出荷され、冷凍野菜は生産コストの低い海外に依存しているといえる。コロッケなど調理冷凍食品を含めた国産の冷凍食品に使用される原料野菜類は約23万トンであり、原料の国内産調達率は90%と高い。とりわけ馬鈴薯、玉ねぎの使用率が高い。
野菜は収穫後も光合成によって得た有機化合物を基質として呼吸を行い、なおも個体を維持するためのエネルギー生産をしている。
最も一般的な基質はグルコースであり、1分子のグルコースは、酸素の存在する代謝により6分子の二酸化炭素と6分子の水および686kcalのエネルギーを生じる。これら生化学反応の速さは、野菜の品質劣化に密接に関係し、その種類は表2.4のように呼吸量によっても分類される。
野菜農家の朝は早い。エダマメのように早朝に収穫することによって、糖分の代謝によるロスを抑え、甘みの強い商品ができることを知っているからである。エダマメのほかにグリーンピースやスイートコーンなど未熟な豆類など特に呼吸が速い種類では、日が昇るにつれて糖をデンプンに変換・蓄積して、甘みを減少させてしまうので、早朝の収穫とその後の冷却とが欠かせない。日中はデンプンの蓄積機能が増大するので、光合成が活発になる前の早朝が収穫時間なのである。
図2.28にはスイートコーンについて収穫後の予冷の効果を示した。呈味に関する詳しい結果は省略したが、収穫後時間の経過とともに風味の低下が著しい。特に糖含量が12時間以降激減し、逆にでん粉が速やかに増加する。しかし、図中(●)で示したように、収穫後予冷を行うとその効果は顕著であり、糖からデンプンに変換する生理的作用を見事に抑制する。糖やデンプンの消長と同様、予冷をしない場合(○)は、水分の蒸散も大きく、外観は萎れていると判断される22)。
現在では予冷の効果が高い作物については、冷却を基本として生鮮出荷される。冷凍食品向け原料としも、予冷は必要不可欠な技術となっている。
野菜の予冷
多くの化学反応と同じく、野菜の呼吸も生化学的な反応である。化学反応は一般にある温度範囲では温度が高いほど反応速度が大きく、保存温度が10℃上昇すると、反応速度は2倍に上昇することは先に述べた。その関係はQ10=2 と表され、アレニウス式としてよく知られている。
各種の野菜・果実についてのQ10を示すと、ブロッコリー3.87、もも 3.51、ほうれん草3.27と非常に大きく、イチゴ2.80、グリーンピース2.69と大きいのに対し、ニンジン2.08、カブ 1.84、トマト1.89、馬鈴薯1.49とこれらの種類は低い。
すなわち、ブロッコリーは10℃保管温度が上昇すると、呼吸速度は3.87倍に跳ね上がる。逆に、温度を10℃下げると呼吸は1/3.87に低下する。ブロッコリーは呼吸速度を抑制するうえで、冷却の効果がよく利く作物といえる。これに対し、馬鈴薯は1.49と小さく、低温保管の効果はそれほど大きくない。
図2.29には数種の野菜・果実の貯蔵温度と呼吸速度との関係を示した。アスパラガスの呼吸速度はレタスに比べ非常に大きく、10℃では約5倍となっている。レタスも冷却によって呼吸速度を抑制することはできるが、レタスに比べアスパラガスでは冷却の効果はより大きく、20℃から5℃に冷却することにより1/3に低減することができる。アスパラガスは積極的に予冷の必要な品種である。
果物においても、オレンジの呼吸はほとんど保管温度の影響を受けないものの、モモでは明らかに冷却の効果が認められる。とりわけイチゴは低温による呼吸の抑制効果が抜群で、鮮度保持の効果が大きい。
葉菜類は組織が軟弱であり、高水分で、収穫後も呼吸・蒸散作用を示すことから環境の影響を強く受けやすい。そのため、葉物野菜の鮮度低下は速く、その流通はその地域内に限られていた。しかし、収穫後の呼吸・蒸散など生理代謝を抑制するため冷却技術が導入され、ほとんどの野菜類を対象に冷却が普及したため、現在では各種の野菜が広域流通されるに至った。また、傷みやすい野菜を劣化させずに輸送する耐震包装や梱包技術の進歩も高鮮度野菜の流通に寄与している。
冷凍野菜の製造
冷凍野菜の製造工程を図2.30に示した。先ず冷凍適性のある品種・系統を選択する。エダマメ、インゲン、サトイモ、コーン、カボチャなどは従来から経験的に適性があると認められていて、冷凍によって生ずる組織の損傷が少ない。
しかし、玉ねぎのように凍結によりかなり柔軟化する種類は冷凍に不向きといわれてきたが、昨今は凍ったまま調理するのなら、軟化しても一向に構わないという主に業務用ユーザーのニーズによって、新たな農産物の冷凍化が進められている。トマトなどもその例である。
糖度やデンプン度から最適収穫時期のものを収穫する。アスパラガス、エダマメ、コーンといった呼吸速度の大きい種類は収穫後ただちに加工を始めるが、インゲン、オクラなどはそれほどでもなく、ゴボウ、ニンジン、馬鈴薯などは急いで処理しなければいけないということはない。
工場に搬入された原料はサイズ選別、異物除去、トリミング、洗浄などの前処理を経て、ブランチング処理を行う。野菜は生のままで凍結すると、冷凍保管中に変色し、それを解凍すると異臭、ドッリップの発生など品質劣化が著しい。
生のままでは植物酵素が活性を保ったまま閉じ込められ、凍結による基質・酵素の部分的濃縮も重なり低温でも酵素反応は進み、保管中にTBA値の上昇、エタノールやアルデヒドの生成、さらに呼吸代謝関連酵素による有機酸の生成などが重なり、品質を劣化させるからである。そのため、ほとんどの野菜については、凍結前に加熱処理して酵素を失活させる処理が必要である。この処理を「ブランチング」と称し、通常は100℃の熱湯で2~5分短時間加熱する。調理における完全加熱する「クッキング(cooking)」と区別して「ブランチング(blanching)」といわれる。冷却した水で10℃以下に冷やし、グリーンピース、粒コーンなどバラ物は連続式IQF装置で凍結する。一般には容器入り品をエアブラスト凍結が採用されるが、定形容量品として接触式プレート凍結も行われる。外装は、袋、紙容器、内袋入り段ボール箱入りの形態で保管する。IIRのデータによれば、実用的な農産冷凍食品の保管期間は、インゲンで-18℃で15か月、-24℃で24か月以上、またニンジンでは-18℃で18か月、-24℃で24か月以上となっている。以下数種の冷凍農産食品についてその製造工程を紹介する。
・フレンチフライポテト
2014年の冷凍農産物輸入量95万トンのうち冷凍ポテトは38万トンと約4割を占め、そのうち約8割はアメリカからの輸入に頼っている(図2.31)。
馬鈴薯を剥皮しカットする。ストレート、やや細いカットのシューストリング、波型断面のクリンクルカットなどの形がある。原料としては糖分が2~3%とやや低い品種を選び、剥皮後カッティングし、ネットコンベヤ上で連続ブランチングする。その後の工程を示す。
熱風乾燥→ 170~180℃30~90秒油煠→ IQF凍結→ 包装→ -25℃以下保管
レストラン、ホテル、ファストフード店などで大量に利用され、家庭用の消費も多い。なお、冷凍ポテトにはこれ以外にチューブ入りのハッシュドポテトスタイルのものも含まれている。
・エダマメ
わが国で賞味される独特の冷凍野菜であり、現在では大部分が輸入に頼っている。2014年には台湾、中国、タイから約7万トン輸入している(図2.32)。元来はレギュラーブランチング製品が主体であったが、近年は3.5~4分間塩ゆでしたロングブランチング商品が主流となっている。
製造に際して原料の選択が特に重要で、台湾においては緑光、鶴の子といった甘みの強い系統が栽培される。その工程を示す。
搬入→水洗→ブランチング→水冷・水切→IQF→選別・包装→-25℃以下保管
通常はIQFバルク品で輸入し、国内で小分け包装することが多い。ロングブランチング品は流水解凍または電子レンジ解凍する。自然解凍してまだ冷たいうちに食べてもおいしい。
・スイートコーン
軸つき、軸つきカット、ホールカーネル(全粒)の形態がある。2014年の冷凍コーンの輸入はアメリカ、タイなどから約5万トンとなっている。近年はホールカーネルの需要が多く、ミックス野菜用としてニンジンやグリーンピースと混合パックする。家庭用、業務用ともに需要が増えている(図2.33)。
甘みの強い系統を選んで栽培し、最適な成熟期をねらって収穫する。収穫後、コーンの糖分が急速にでんぷんに変換するので、予冷し速やかに工場搬入する。カーネル品製造工程を示す。
剥皮→ 水洗→ バラし→ 95℃1~2分加熱→冷却→選別→ IQF→包装→ -25℃以下保管
軸つき品の場合は、蒸気で10~15分、熱湯で5~7分ブランチングするが、蒸気加熱の方が風味がよいといわれている。カーネル品は凍ったまま熱湯で解凍する、また凍ったまま炒めるなど、常温長時間解凍を避けることが基本である。
・ほうれん草
輸入ほうれん草3万2千トンの約9割が中国産であり、ベトナム産が5%となっている。中国の場合は緑黄色で柔らかで風味の良い系統が栽培される。春作・秋作があり、収穫後は迅速に工場に搬入する。根つきと根カットの商品形態があるが、後者の工程を示す。なお、ブロック凍結品の解凍は、袋に入ったまま流水解凍、IQF品は自然解凍または凍ったまま調理加熱する。
水洗→ 根・枯葉の除去→ 根のカット→ 95~100℃30~90秒ブランチング
→ 冷却→ 水切り→ IQF→凍結→ -25℃以下保管
・サトイモ
冷凍さといもは2014年には約4万トンの輸入があり、ほとんどが中国産である。丸のほかに6角面体にカットした商品もある。原料は丸型で粘質のものが好まれ、えぐ味の少ない系統を選択して栽培する。わが国では九州地区で若干生産される。
洗浄→ 剥皮→ サイズ選別→ 熱湯で5~15分ブランチング→ 冷却
→ IQF→ 包装→ -25℃以下保管
・フルーツ
野菜以外にも従来から柑橘類、ブドウ、リンゴ、グレープフルーツなどの濃縮冷凍果汁が生産されている。また、ミキサージュース用としていちご、柑橘類、メロンが、またレモン、もも、パインアップル、ライチが冷凍果実として、冷凍イチゴ・ブルーベリーなどがジャムやフルーツソース用として輸入される。
野菜のホームフリージング
冷凍野菜類の本格的製造には基本的にブランチング処理が欠かせない。冷凍根菜類、豆類はそのまま生の状態で喫食することはなく、通常は調理加熱を行って食卓に供するので、若干の冷凍変性が生じても調理時の加熱変性と重複するため、冷凍変性自体の大きさは覆い隠され、凍結の影響は軽微に評価される。
葉菜類においても加熱調理する分には、生野菜特有のパリパリッとした食感が求められることはほとんどない。しかし、サラダ用葉菜類を冷凍すると、どうしてもシャキシャキ感を復元することは今の技術では困難なため、生鮮野菜に頼らないといけない。
近年、それを承知のうえで、生鮮野菜を袋に詰め、家庭用冷蔵庫のフリーザー機能を用いて凍結する方法が各種紹介されている。いずれの場合も、シャキシャキ感は喪失しサラダ用には全く不向きとはいえ、解凍せず直接加熱調理に使用するのには適するという。短期間保存ならば十分実用的であるとして、その手順が紹介されている(図2.34)。
家庭用冷蔵庫のフリーザーが急速凍結グレードに改良され、野菜組織中には復元性のよい微細氷結晶が形成されるようになったこと、ジッパーなど密封袋に入れることにより乾燥防止が可能なこと、また冷凍保存が-25℃以下に設定可能となり、植物の酵素作用を数か月間なら抑止できるようになったことなど、急速凍結と深温冷凍保管並の機能を持つ高性能家庭用電気冷蔵庫の普及が、これまでの常識にとらわれない野菜のホームフリージング用メニューの開発を可能にした。